研究内容

人間をはじめとする好気的生物は、酸素分子を利用することによって効率のよいエネルギー産生を行っています。一方、この酸素分子には強い毒性作用があることも判っており、この毒性作用は、別名、「酸化ストレス」とも呼ばれています。好気的生物が酸素を利用してエネルギーを作る際に生じる活性酸素が酸化ストレスの原因と考えられています。活性酸素は化学反応性が高く、生体中の様々な物質(脂質、核酸、蛋白質など)と反応してこれを酸化することによって細胞を傷害し様々な病態・疾患を引き起こします(下図)。細胞膜の主成分である脂質は、特に活性酸素との反応性が高く、活性酸素と反応して生じる脂質過酸化物は、神経変性疾患、動脈硬化、炎症、癌といった病気の発症ばかりでなく老化現象にも深く関わっていることが明らかとなっています。私たちの研究室では、この活性酸素、脂質過酸化物によって誘導される細胞内シグナル伝達の異常と細胞傷害の分子機構の解明を目指しています。また、酸化ストレス傷害を防御する分子(抗酸化酵素等)、抗酸化物質の研究にも取り組み、将来の医学への応用を視野にいれて研究を進めています。